しおりん日記

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クドカンの「ロミオとジュリエット」がはちゃめちゃにキュートな悲劇で最高だった話(※ネタバレあり)

 2018年12月2日に下北沢の本多劇場にて宮藤官九郎演出の「ロミオとジュリエット見て来たんですけど、もうはちゃめちゃにキュートでポップな悲劇で最高だったので、みんなとにかく当日券を並んで見に行って!!!*1己のモットーの一つが「鉄は熱いうちに打て」なので、そのテンションが残ってるうちに感想を書いておきます。なお、今回のイメージカラーは「パステルピンク」です。公演を見たら伝わる。はず。

 っていうことで、こっから先はネタバレありです。

 

公演概要

M&Oplaysプロデュース
ロミオとジュリエット

原作:ウィリアム・シェイクスピア
翻訳:松岡和子
脚色・演出:宮藤官九郎
出演:三宅弘城森川葵勝地涼皆川猿時小柳友阿部力今野浩喜、よーかいくん、篠原悠伸、安藤玉恵池津祥子、大堀こういち、田口トモロヲ


2018年11月20日(火)~12月16日(日)
会場:東京都 下北沢 本多劇場 

他、地方公演あり

mo-plays.com

 

 今回一番驚いたし、感激したこと。セリフがほぼほぼシェイクスピアの翻訳そのまんまなのに、めっちゃクドカン

 あんなに狂ったように「メタルマクベスdisc1&2」見ておいて*2言うの憚られるんですけど、私そもそもシェイクスピアってそんなに得意じゃないんですよ。何って言い回しが。ストーリーは面白いけど、何か台詞がくどくて、一つ一つの言葉は美しいんだけどあまりにもそれが連なりすぎて中身が入ってこない。昔、学校の先生で絶え間なく繋がった言葉をだらだら話す先生って、何言ってんだか入ってこなかったじゃないですか。あんな感じです。

 ちなみに事前に出されていたクドカンのコメントがこれなんですけど、

私ごとですが2年ほど演劇を怠けておりました。
そしてこの後、またしばらく演劇を怠ける予定です。
なんだか後ろめたいなあ。そう感じていたら、「三宅さん主演でロミオとジュリエットをやりませんか?」というイカれた企画が舞い込んだ。
しかもジュリエット役の森川さんは初舞台。これは演劇人として初心に帰れということか・・・。
というわけで、現段階で決めていることは
「なるべくまんまやる!」 

宮藤官九郎

 

M&Oplaysプロデュース「ロミオとジュリエット」特設サイト | 作:W・シェイクスピア 翻訳:松岡和子 演出:宮藤官九郎

 いや、想像以上に「なるべくまんま」だった!!!そのセリフの量も表現もくどさも変わらないのに、けれど何故かすっかりクドカンになってる。魔法みたい。本当にシンプルに魔法みたいって思ったんですよ。だって、あまりにもセリフがすーっと入ってくる。全体的に感じたのはそのくどさとか長さとか拍子や響きの妙をそこはかとなく「いじる」方向性(知らんけど*3)。特にマキューシオの台詞とか、本当にいじってるな~~~って感じだった(笑)

 あと、「なるべくまんま」だから三宅ロミオと森川ジュリエットがめちゃくちゃキスする。しまくる。「なるべくまんま」らしく出会い頭に名前も知らないまま三連発でキスをする。最高。

 

特に好きだったところ

①演出

 前述の通りそのまんまな台詞がボコスカそのまま登場する。だけど現在の私たちが分かりやすいような状況に置き換えられていたり、前後に口語調が付け加えられてたり、演者いつけられらた演出が台詞を体現していたり、とにかくめちゃくちゃ分かりやすい。そして笑っちゃう。堅苦しくなくてお馬鹿なのに、めちゃくちゃ悲劇。とにかく言い方はアレなんですけど、ちゃんと悲劇なんですよ。それが凄い。「海外文学だめでも、難しい本が読めなくても、笑いながら悲劇の根底が分かる」ロミジュリ。クドカンが3Dで翻訳したロミジュリって感じ。

 その分かりやすい3D翻訳のせいで、より際立っているのが「恋の持つバカバカしさとパワー」だと思うんですよ。二人は一目で恋に落ち(日曜)、次の日にはこっそりと結婚をし(月曜)、その直後っていうか結婚した数時間後にロミオはジュリエットのいとこを殺してしまい(月曜)、さらにその晩には悲しみに暮れるジュリエットのためにと3日後にイケメン貴族との結婚が決まって、嘆いたジュリエットは次の日に神父から毒薬を貰って(火曜)夜に服毒し朝には仮死(水曜)、駆け付けたロミオは服毒死それを見たジュリエットも自殺(木曜)って、登場人物全員せっかちか!!!!!ってな具合に分かりやすくしたこと&時間軸を強調する台詞*4この脚本の持つ駆け抜けすぎた恋のバカバカしさをめちゃくちゃ強調してるんですよ。めちゃくちゃふざけ倒してるのにきちんと悲劇の筋を辿っていくの、あまりに綿密でドキドキする。圧倒的なバランス感覚。悲劇なのにどこか喜劇な原作をさらに絶妙なバランス感覚で立体化してる気がするんですよ!!!!!……宮藤官九郎ってホントめちゃくちゃ天才だなぁ(語彙力ゼロの再確認)あと、「人って超簡単に死ぬよな~~~」ってことを何故か再確認した。ロミジュリは恋物語でもあるけど、死の物語でもあるよね。

 

②舞台装置や衣装

 もう、とにかく、本当にメルヘンおとぎの国。絵本の世界。ケアベアの色味。

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ケアベアです

 舞台装置は色味がほとんどパステルカラー。淡くて優しいピンク、ブルー、イエローそしてホワイト。場面転換とともにパステルカラーの積み木で教会を表したり、噴水を表したりするのもとっても絵本とか童話みたい。なので、悲劇なのにとってもキュートでポップな感じが漂うんですよね。お客さんに対する悲劇的な物語の当たりが優しい。なんていうか、おもちゃ箱の中で繰り広げられている感じ*5なんですよ!

 登場人物の衣装も絵本の中から飛び出してきたみたいでめちゃくちゃ可愛い。そしてそのおかげで登場人物の立ち位置が分かりやすい真っ白なお洋服を着たピュアな女の子ジュリエット、かぼちゃパンツに金髪おかっぱな貴族の男の子ロミオはもちろん、敵対する両家も赤い服と青い服に分かれていたりしてすごくすごく視覚的に分かりやすい。衣装が記号としてとてもよく働いてるんですよ。しかも可愛い(大事なことなので2回言いました)

 

③音楽

 古典の「ロミジュリ」なのに音楽が向井秀徳。突然、濃厚に下北沢の色が出てきましたね……ここはヴェローナではなくシモキタ……クドカンとシュートク(概念)音楽全体にそこはかとない向井秀徳味を感じるんですけど、終盤には慣れてしまい油断をしていたら、ラストがめちゃくちゃ向井秀徳だった。無濾過の向井秀徳向井秀徳の味しかしない向井秀徳。なので、余韻がめちゃくちゃ向井秀徳だし終演後ロビーで子供が向井秀徳を口ずさんでいるというシモキタ・ワンダーランドが広がっていました。子供にまで浸透しちゃう。すごい。

 

 以下、特に印象的だったキャストさんの感想です。※役名は代表的なもののみ

 

ティボルト(皆川猿時

 猿時さんが猿時さんのままシェイクスピアの世界に召喚されていた。っていうか、甦ったシェイクスピアが宛書したティボルトって感じがした……自分でも何言ってるか分かんないからとにかく見て。猿時さんなんだけど、すごいティボルト。ちゃんとティボルト。世話焼きだけど感情的っていうのがめちゃくちゃ伝わる。っていうか、ティボルトが途中でおめかしするみたいに猫のヒゲ書いたり、ネズミを捕ったりするんですけど、「ティボルト」って役名はイギリス民話 『猫の王~トム・チルドラム』って話から名前が取られたっていう説があるそうで、まあ多分それに基づいているんだろうけど……いやそんなの分かるかいっ!!!(笑)しかしまあ、それほどまでにちゃんと作り込まれたティボルトなんですよね。本当に猿時さんが猿時さんに宛書された(されてない)ティボルトを演じていた。すごい。

 

マキューシオ(勝地涼

 地方の観光地で描いてもらった似顔絵みたいなマキューシオチャラさ・空気の読めなさ・おしゃべりあたりがめちゃくちゃ誇張して描かれている。その感じが目につく特徴だけやたら強調して描かれた観光地の似顔絵みたいなんですよ。でも割と呆気なく死んでいくマキューシオにはそのチープで薄っぺらい感じがめちゃくちゃ似合うんですよね……。あと、勝地くんのマキューシオはあの長くてくどいシェイクスピアの台詞をラップ調で言ったりするんですよ。自分でも何を言っているか分からないけど、マジで一人だけシモキタ・ディビジョンでラップバトルをしているマキューシオ*6だった。ほんと、みんなの目で確かめて……。

 

ジュリエット(森川葵

 舞台初出演。だからか、正直台詞は「言わされてる感」が拭えないんだけど、とにかく頭が小さくて線が細くって顔がしんどいくらい可愛くて可憐で世間知らずでキラキラしててつやつやしててきゅるんきゅるんしててすんごいジュリエット。肉体が童話の造形してる。絵本から飛び出て来たとしか思えないビジュアルなんですよ。パステルカラーの世界が嘘みたいに似合う。凄い。それだけでめちゃくちゃジュリエットとしての存在感、説得感がある。そしてそのビジュアルからもたらされた異様な説得感のせいで言わされてるかのような拙い台詞回しすら幼さ*7の強調に思えてきたりするんですよ。いや、これは私の脳味噌がビジュアル情報に弱すぎるせいかもしれないけど。もしかしたら初出演で初々しいからこそあの寓話のような可愛らしさながらも向こう見ずで無鉄砲でちょっとお馬鹿な感じがするのかもしれないですね。とにかくあまりにもビジュアルが世界にぴったりだった……。でももし舞台セットや衣装が重厚だったら似合わなかったかも。パステル世界の、童話の世界の、おもちゃ箱の中の女の子なので!!!

 

ロミオ(三宅弘城

  もう!!!奇跡の50歳は推し*8だけでお腹いっぱいなんだけど!?!?大好き!!!!!正直ですね、私だって人並みに「いやいや三宅さんがロミオってwwwいくら若いって言っても50歳やんけwwwww」って思っていましたよ。けどね、目の前で起こったことをありのままお伝えすると「三宅ロミオは間違いなく16歳。も~~~~~~!!!!!とにかくチャーミングで正統派のロミオ。嘘みたいに魂が正統派。ピュアで汚れを知らない、真っ直ぐすぎて愚かしい人。演劇とか映画で見るロミオって嘘みたいにあっさりロザライン*9からジュリエットに心変わりしたり意外と腹立つとこないですか!?それを全部パステルカラーのマシュマロみたいなチャーミングさで包んでくれる。なんか「もう!どうしようもないお馬鹿さん☆」って気持ち……あれ?母性???50歳に母性?????とにかくあまりの愛おしさに会場みんな、絶対にハートを射抜かれてしまう……ずるい大好き……こんなのみんな応援してしちゃうじゃん……。

 もちろん身体能力異常なアクションシーンや、ベッドシーン(???)の全裸で見せる肉体の物理的な若さもさることながら、ピュアでチャーミングで、だけど若者故の向こう見ずで刹那的な単細胞っぷりを演じきる、その若い精神の再現が本当に凄いなぁって思う。本当にひたすらに正統派な、おとぎ話の世界の優しくて愚かで可愛いロミオだった……。

 主に三宅さんのロミオを見るためにリピートしたい。

 

 というわけで、これが終わったらクドカン「またしばらく演劇を怠ける予定」らしいので、気になった人は今のうちに見に行きましょう!当日券が出るそう*10なので、私も当日券並びます。本多劇場で、会いましょう~~~!

*1:東京公演は前売り完売です

*2:感想ブログたくさん書いてます。よろしければ。

*3:全てが無効化する魔法の言葉です

*4:曜日を読み上げるシーンがあり、かなり明確

*5:ただ、おもちゃ箱といってもトイ・ストーリーの世界観ではない

*6:意味不明な方は現在流行の「ヒプノシスマイク」というラップソングプロジェクトを調べてください

*7:ジュリエットは14歳です

*8:劇団☆新感線河野まさとさんです。奇跡の50歳。この他の奇跡の50歳は天海祐希様など。

*9:ロミオがジュリエットと出逢う前に片想いしていた女の子。本作ではまさかの今野さん

*10:開演の1時間前から販売だそうです